You’ve Got

a Friend

クレメンズの森。

聞こえるのは、森に身を寄せる虫や鳥達の小さなしゃべり声と、遠くで聞こえる波の音。

それから…

 

トトト トトト トトト…

どこからともなく、小さな足音が。

しばらくすると、足音の主が走ってやってきました。

首から馬蹄の首飾りをさげて、とても誇らしそうにやってきたのは、アキと呼ばれる小さな男の子でした。


アキは大きなケヤキの下まで来ると、サッとしゃがみこみ、何かを探し始めました。

「どこかなぁ どこかなぁ、今日は落ちてるかな?」

何を探しているのでしょう?

聞こえるのは、不思議そうに彼を見守る虫や鳥達の小さなしゃべり声と、遠くでささやく波の音。

「ダメだ、見つからないぞ。」

アキは立ち上がると、膝についた土を払落しました。

「ちぇ!」足元の小さな小石を蹴とばすと、小石はケヤキにぶつかりコツンと音を立て、

そのまま根元に転がりました。

「あれ?」

すると根元に何か小さいものが見えました。

静かに、だまってこちらを見ています。

アキは恐る恐るのぞきこむと、根元に小さな人形が姿を現しました。

 

木の枝と木の実で出来たその人形は、アキの大好きな馬の形をしていました。

いつか、大親友のお兄さんに作ってもらった大切なお馬さんです。

「アンナだ!」アキはアンナと呼ばれた人形に手を伸ばすと、思わずハッとしました。

そしてアンナが向いてる方向を確認すると、「有難う」とそっと頭をなでてやりました。

アンナが向いていた方向に数歩進むと、茂みの中にまた別の小さいものが二つ見えました。

彼らもまた静かに、けれどアンナとは別の方向をじっと見ています。

アキはもう怖がってなどいません。

そっとしゃがみ込むと、

それは貝殻と木の実で出来た二匹のトカゲでした。

小さく並んで、じっとしています。

「やぁ、ゼルコバ!スピラエア!」

アキは二匹の向く方向を確かめると、そっと手に乗せ歩いていきました。

 

トカゲ達の向いていた方向に数歩進むと、大きく倒れた木が見えました。

折れずに残った木の枝、そこにとまる小さいものが見えます。

やっぱり静かに、けれどトカゲ達とは別の方向をじっと見ています。

そしてアキももう怖がってなどいません。

 

 

のぞきこむと、それはワインのコルクと木の枝や実で出来た小さな鳥のようでした。

「やぁベン!」ベンと呼ばれたその鳥は、倒れてむき出しになった木の根を見つめていました。

アキは優しく手に取ると、木の幹を根っこに向かって目でたどっていきました。

すると木の皮がはがれたところに、何かの絵が彫ってあります。

                                                        .  .  .

「あった!僕の描いた犬!」

それはいつかアキが自分で彫った犬の絵のようでした。

絵の下には"シュエール"と彫ってあります。

ですが、どうしてこんなところに?

                                              .  .

「ここ掘れワンワン!」

そう言うと、アキは木の下に手を伸ばしました。

 

不自然に積み重なった小石をどけ、木の葉をどけ、土をはらいます。

すると、小さなジャムの瓶が姿を現しました。

中には小さな石が入っていて、日の光が射しこむと、中でキラキラ光っておりました。

「あった あった!」


それは間違いなく、アキが探していたもの。中身を取り出すと、それを太陽にかざしました。

「太陽の雫!見つけた時からコレをプレゼントするって決めていたんだ!

ケイのお兄ちゃんきっと喜んでくれる!だってこんなに綺麗なんだもの」

ケイとは大親友のお兄さんの名前でした。

アキは大事にその石をポケットにしまうと、アンナの待つケヤキの樹まで戻ってきました。

そしてスピラエア・ゼルコバの人形と、ベンの人形を隣に並べてやると

「僕がいない間、守っててくれて有難う!」改めてお礼を言いました。

木の下のジャム瓶はアキがこっそり埋めたものでした。

誰にも取られることのないよう、又いつでも探し出せるように、この人形達をあちこちに配置したのもアキでした。

皆はアキがいない間、しっかりとクレメンズの森で“太陽の雫”を守ってくれていたのでした。

「君たちは立派な“クレメンズのお守り隊”だ!」

アキは敬意を表して、皆の前にご馳走を並べました。大きな葉っぱのお皿と、沢山の木の実のご馳走です!

人形達は動きはしないものの、とても嬉しそうに見えました。

アキはシュエールの前にも葉っぱのお皿と木の実を置こうとしました。

すると首を傾げて「なんだかお墓みたい」そう言うと、先のとがった石を拾い、シュエールの隣に

大好物の骨の絵を彫ってやりました。

「たくさん食べていいよ!」

そして、アキは再び

トトト トトト トトト…

小さな足音を立てて大親友のもとへ駆けていきました。

後に残ったのは、クレメンズの森に聞こえる、

森に身を寄せる虫や鳥達の小さなしゃべり声と、遠くで聞こえる波の音。

そして今日も静かに森を見守る、頼もしき森のお守り隊。

 

頼もしきクレメンズのお守り隊!

© 2006.8.18 olive -Akira Sugihara-

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